協働ロボットにできることは?作業の種類別に向き不向きを整理してみた
何がどこまで任せられるのか具体像が湧かない…協働ロボットが得意な作業・不得意な作業を種類別に整理
協働ロボットに任せられるのは、ひとことで言えば「手順が決まっていて、繰り返しの多い作業」です。
搬送、パレタイジング、機械へのワーク着脱、ねじ締め、塗布の補助などが代表格です。
逆に、力加減や目視の判断が毎回変わる作業は、現時点の技術では不向きです。
この線引きを知らないまま検討すると、導入後に使い道を探す羽目になります。
展示会でデモを見て、動画で他社事例を眺めて、それでも手が止まる。
「うちのあの工程に、本当に使えるのか」
「デモみたいに形の揃った部品ばかりじゃないんだが」
「買ってから仕事がない、が一番怖い」
具体像が湧かないのは、自社の作業を種類で整理していないからです。
この記事では、協働ロボットが得意な作業と不得意な作業を種類別に分け、自社工程の向き不向きを判断する基準まで整理します。
【この記事のポイント】
- 得意なのは搬送・パレタイジング・ワーク着脱・ねじ締めなど「位置と手順が決まった反復作業」
- 不得意なのは力加減・目視判断・形の不揃いなワークなど「人の感覚に頼る作業」
- 向き不向きは「ワークの揃い方」「判断の有無」「サイクルタイム」の3点でほぼ見分けられる
この記事の結論
- 一言で言うと、協働ロボットは「人の隣で働ける、単純反復作業の専任者」
- 最も重要なのは、作業を分解して「任せられる部分」だけを切り出すこと
- 1工程まるごとではなく、搬送や着脱など部分的に任せる使い方が現実的
- 人より速くて正確とは限らない。速度が必要なら産業用ロボットや専用機と比較する
- 本体価格は300〜500万円程度、システム全体でその1.5〜3倍が一般的な目安
協働ロボットが得意な作業の種類
搬送・パレタイジング:最も導入しやすい定番
協働ロボットの定番は、箱や部品を持ち上げて決まった場所へ積む作業です。
パレットへの箱積み(パレタイジング)は、位置が規則的でワークの形も揃っているため、ロボット向きの条件がすべて揃っています。
重量物の繰り返し作業は腰への負担が大きく、厚生労働省の統計でも製造業の労働災害では腰痛が目立ちます。
人の体を守る意味でも、優先的に任せたい種類の作業です。
実際、協働ロボットの一種であるテックマンロボットを取り扱う石川工機(名古屋市天白区)では、テックマンを使ったパレタイジングシステムをこれまでに3件構築しています。
箱のサイズと積み付けパターンが決まっていれば、成立させやすい工程と言えます。
ただし可搬重量には上限があるため、重すぎるワークは機種選定の段階で確認が必要です。
機械へのワーク着脱(マシンテンディング)
加工機や検査機に部品をセットし、終わったら取り出す。
この着脱作業も協働ロボットの得意分野です。
作業自体は数秒でも、機械が動いている間は人が待つことになり、拘束時間の割に付加価値が低い仕事です。
ここをロボットに任せると、人は複数台の段取りや検査など、判断が必要な仕事に回れます。
ワークの置き場所をトレーや治具で揃えておけば、動作は安定します。
逆に、バラ積みの部品を拾わせるにはカメラやセンサが追加で必要になり、難易度と費用が一段上がります。
検討の順番としては、まず「人が待っている時間」がどの機械の前で発生しているかを洗い出すこと。
待ち時間の長い機械ほど、着脱の自動化で回収できる効果が大きくなります。
夜間や昼休みに機械だけ動かし続ける、いわゆる無人運転の足がかりにもなる作業種です。
ねじ締め・塗布・検査補助などの定型作業
電動ドライバーを持たせてのねじ締め、ノズルを持たせての塗布、カメラの前へワークを差し出す検査補助。
手先の道具を替えることで、協働ロボットは幅広い定型作業に対応します。
共通する条件は「位置が決まっている」「手順が毎回同じ」であることです。
塗布のように軌道の安定性が品質に直結する作業は、人のばらつきをなくせる点でロボット化の効果が出やすい種類です。
ねじの種類が多い、塗布位置が製品ごとに大きく変わる、といった場合は段取り替えの設計が成否を分けます。
また、道具を持たせる作業では「ハンドやツールの選定」が本体選びと同じくらい重要です。
同じロボットでも、先端ツールの出来しだいで安定度は大きく変わります。
カタログのロボット単体ではなく、ツールと治具を含めたシステムとして考える。
この視点を持つだけで、検討の精度は一段上がります。
不得意な作業と、向き不向きを判断する基準
不得意なのは「感覚」と「ばらつき」に頼る作業
力加減を指先で確かめながらの嵌め込み。
傷か汚れかを見た瞬間に区別する目視判断。
柔らかいケーブルや布のように形が毎回変わるものの扱い。
こうした作業は、人が無意識にやっている判断の量が多すぎて、ロボットには再現が困難です。
よくあるのが「人がやっている通りにロボットにやらせたい」という発想で検討が始まり、コストが膨らんでいくパターンです。
人の動きの模倣ではなく、ロボットが成立する形に作業の方を直す。
この順番が、協働ロボット活用の大原則です。
産業用ロボットとの違いを押さえる
協働ロボットは安全柵なしで人の隣に置けるのが最大の特徴です。
その代わり、安全のために速度と力が制限されており、産業用ロボットより動きは遅めです。
「ロボットは人より速くて正確」と思われがちですが、実際は用途によります。
短いサイクルタイムで大量に処理したいなら、柵で囲った産業用ロボットや専用機の方が合理的な場面も多くあります。
協働ロボットが活きるのは、人と場所を共有したい現場、レイアウト変更が多い現場、スペースに余裕がない現場です。
速度を取るか、柔軟さと省スペースを取るか。
ここが機種選定の分かれ目になります。
向き不向きを見分ける判断基準
自社の作業が協働ロボットに向くかどうかは、次の基準でおおむね見分けられます。
第一に、ワークの形と置き方が揃っているか。
第二に、作業中に人の判断(良否、力加減、やり直し)が入らないか。
第三に、要求されるサイクルタイムに余裕があるか。
第四に、可搬重量と動作範囲が機種の仕様に収まるか。
第五に、段取り替えの頻度と内容をあらかじめ決められるか。
5つのうち引っかかる項目があっても、即あきらめる必要はありません。
供給装置や治具を足す、工程を分割するなど、設備側の工夫で成立に持ち込めるケースも多いためです。
一般的な検討の流れとしては、作業の洗い出し、基準での仕分け、候補工程の動画撮影、専門側への相談、という順になります。
動画は数分のスマートフォン撮影で十分です。
人の手の動きを客観的に見直すだけでも、「ここは判断していない」「ここだけ感覚だ」という切り分けが進みます。
ここから先は図面や現場を見ないと判断できないため、検討が進んだらロボットSIerなど専門側の目を入れるのが早道です。
日本ロボット工業会の統計を見ても産業用ロボットの導入は製造業全体に広がり続けており、協働タイプはその中でも中小規模の現場に広がった選択肢と言えます。
よくある質問
Q1. 協働ロボットが一番得意な作業は何ですか?
A1. パレタイジングや搬送、機械へのワーク着脱といった反復作業です。
位置と手順が決まっていて、ワークの形が揃っていることが条件です。
この条件を満たすほど、安定稼働させやすくなります。
Q2. 人と同じスピードで働けますか?
A2. 安全機能のため速度に制限があり、人より遅い場面も珍しくありません。
速さではなく「休まず一定品質で続けられること」が価値です。
サイクルタイムが厳しい工程は産業用ロボットや専用機と比較してください。
Q3. 目視検査は任せられますか?
A3. ロボット単体ではできず、カメラと画像処理システムの組み合わせが必要です。
ロボットの役割はワークをカメラへ正確に差し出す部分です。
判定の難易度はワーク次第のため、サンプルでの事前検証が前提になります。
Q4. 形がバラバラな部品でも扱えますか?
A4. そのままでは困難です。
トレーで整列させる、供給装置を足す、ビジョンで位置を検出するなどの対策が必要です。
ワークを揃える工夫のほうが、安くつくことも多いです。
Q5. 費用はどのくらい見ておくべきですか?
A5. 協働ロボット本体で300〜500万円程度が目安です。
ハンドや架台、安全対策、治具を含むシステム全体では、その1.5〜3倍程度を見込みます。
何を含むかは構成次第のため、見積もりは内訳で比較してください。
Q6. 安全柵は本当に不要ですか?
A6. リスクアセスメントの結果次第です。
協働ロボット自体は柵なし運用を想定した設計ですが、ハンドやワークの形状によっては対策が必要になります。
導入時に安全性の評価を必ず行ってください。
Q7. 小ロット多品種の工場でも使えますか?
A7. 使えます。
むしろ段取り替えやレイアウト変更に強いのが協働ロボットの持ち味です。
ただし品種ごとのプログラムと治具の計画を先に立てることが条件です。
Q8. どの工程から検討すればいいですか?
A8. 「単純で、繰り返しが多く、人が嫌がる作業」から選ぶのが定石です。
パレタイジングや着脱はその典型です。
1工程のスモールスタートで効果を確認してから広げると、失敗しにくくなります。
まとめ
今日のおさらい3つ
- 協働ロボットの得意分野は搬送・パレタイジング・着脱・ねじ締めなどの定型反復作業
- 感覚や目視判断に頼る作業は不向き。人の模倣ではなく、成立する形に作業を直すのが原則
- ワークの揃い方・判断の有無・サイクルタイムなど5つの基準で向き不向きを事前に整理できる
まずは自社の作業を書き出し、5つの基準に当てはめてみてください。
「任せられそうな作業」が1つでも見つかれば、検討は前に進みます。
現場の写真や部品のサンプルがあれば、成立条件はかなり具体的に判断できます。
比較検討の1社として、現場を見られる相手に相談するところから始めてみてください。
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