協働ロボットの安全性は大丈夫?人と並んで働ける理由とリスク対策とは
柵なしで人の隣に置いて本当に安全なのか…協働ロボットの安全性の仕組みと導入時に確認すべきリスク対策
協働ロボットは、人と接触したら止まる・押す力を制限するという安全機能を前提に設計されており、リスクアセスメントを実施した上でなら、安全柵なしで人の隣に設置できます。
根拠は2013年の労働安全衛生規則の改正と、ISO 10218やISO/TS 15066といった国際規格です。
ただし「協働ロボットだから無条件に安全」ではありません。
安全かどうかを決めるのは、ロボット本体よりもハンド・ワーク・運用を含めたシステム全体の設計です。
ヒヤリハット報告書を夜に読み返しながら、導入をためらっている安全担当の方もいるはずです。
「柵なしで、本当に事故は起きないのか」
「もし挟まれたら、会社は何と説明するのか」
この記事では、協働ロボットを使った自動化を手がける石川工機が、安全性の仕組みと、導入時に確認すべきリスク対策を整理します。
【この記事のポイント】
- 協働ロボットは力と速度を制限し、接触を検知したら停止する設計。だから柵なし設置が認められる
- 法的な前提は2013年の規制緩和とリスクアセスメントの実施。「置けば安全」ではない
- 実際の危険源はロボットアームよりも、ハンドの形状・つかんだワーク・周辺の運用に潜む
この記事の結論
- 一言で言うと、協働ロボットの安全は「本体の機能」と「システム設計」と「運用ルール」の3階建て
- 最も重要なのはリスクアセスメント。誰が・いつ・どの範囲で実施するかを発注前に確認する
- 安全性を高めると速度は落ちる。安全と生産性のバランス設計こそSIerの腕の見せどころ
協働ロボットが柵なしで働ける理由:安全の仕組みを知る
力と速度を制限する仕組み…ぶつかったら止まる設計
協働ロボットの安全機能の中心は、力と速度の制限です。
アームの各関節にはトルクを監視するセンサーが組み込まれ、人や物への接触を検知すると即座に停止します。
人に危害を与えないよう、接触時の力や圧力を規定値以下に抑える「パワー&フォースリミット」という考え方が、ISO/TS 15066で具体的に示されています。
動作速度も、産業用ロボットが高速で振り回すのに対し、協働ロボットは人がよけられる速度域に抑えられています。
当社が扱うテックマンロボットもこの思想で設計された協働ロボットで、カメラを内蔵し、周囲の状況に合わせた運用がしやすい機種です。
「触れたら止まる」を体感していただくと、多くの方の警戒がひとつ緩みます。
展示会などで手を出して試せる機会があれば、ぜひ一度触れてみてください。
理屈より速く納得できます。
法規制と国際規格…2013年の規制緩和が転換点
かつて日本では、出力80Wを超える産業用ロボットは柵などで人と隔離することが原則でした。
転換点は2013年の労働安全衛生規則に関する規制緩和です。
リスクアセスメントに基づく安全対策を実施するなどの条件を満たせば、80Wを超えるロボットでも人と協働できるようになりました。
国際的にはISO 10218がロボットの安全要求を定め、ISO/TS 15066が協働運転の詳細を規定しています。
つまり協働ロボットの「柵なし」は、規格と法令に裏付けられた運用です。
感覚的な「たぶん大丈夫」ではありません。
日本ロボット工業会の統計でも協働ロボットの出荷は増加傾向が続いており、人手不足の進む中小製造業での採用が広がっています。
一方で、規格を満たすのはメーカーの仕事、現場で安全を成立させるのは導入側とSIerの仕事。
この役割分担を、次で説明します。
それでも「無条件に安全」ではない…リスクアセスメントという前提
ここが一番大事な話です。
協働ロボットは、設置すれば自動的に安全になる機械ではありません。
柵なし運用の前提は、その現場ごとのリスクアセスメント。
ロボットが何をつかみ、どの範囲を動き、人がどこを通るのかを洗い出し、危険源を特定して対策する手順です。
たとえば、アーム自体は接触時に止まっても、先端に刃物のような治具を付ければ危険源は残ります。
とがったワークをつかんで動けば、低速でも人に当たれば怪我につながります。
「協働ロボットだから安全でしょう」という思い込みは、導入で失敗しやすいポイントのひとつです。
正直なところ、この前提を説明しないまま販売される協働ロボットが増えていることに、危うさを感じる場面もあります。
リスクアセスメントを誰が実施するのか。
発注前に、依頼先へ必ず確認してください。
協働ロボットが自社の工程と現場条件で安全に成立するかは、レイアウトと作業内容を見ないと判断できません。
現場確認からのリスク整理も含めて、石川工機にご相談ください。
導入時に確認すべきリスク対策:現場で見てきた実際
危険源はロボットよりも「ハンドとワーク」に潜む
実際の現場でリスクアセスメントをすると、危険源の多くはロボット本体ではなく周辺にあります。
確認すべきは4つ。
1つ目はハンドの形状。
角や突起があれば、接触時の圧力が一点に集中します。
2つ目はワーク。
重量物や鋭利な部品をつかんでいる間は、落下や接触の危険が増します。
3つ目は人の動線。
ロボットの可動範囲と人の通路が重なる場所では、速度を落とす、エリアセンサーを併用するなどの対策を検討します。
4つ目は挟まれ。
アームと壁や架台の間に、体を挟み込む隙間を作らないレイアウトが必要です。
厚生労働省の統計でも、製造業の労働災害では挟まれ・巻き込まれが大きな割合を占めており、ロボットに限らず設備設計の基本として意識すべき点です。
安全対策は足し算ではなく、レイアウト設計の段階から織り込むほどコストも下がります。
安全に導入できた現場がやっていたこと
化成品メーカーの倉庫でパレタイジングシステムを導入したときのことです。
安全担当の方は導入前、「柵のないロボットなんて認められない」とはっきり反対していました。
そこで現場確認の段階からその方に加わってもらい、人の動線を図面に落とし、接触リスクのある範囲では速度を落とす設定を一緒に決めました。
ロボットが低速で動き出す試運転の日、その方が最初にやったのは、自分からアームに触れて止めてみることでした。
稼働から数か月後に訪ねると、作業者がロボットの隣を身構えずに通っていく。
その光景が答えだと思います。
別の電機部品関連の組立現場では、始業前点検のチェック表に「非常停止ボタンの位置確認」を入れ、月に一度は停止動作のテストを続けています。
安全は導入日に完成するものではなく、運用の習慣で維持されるもの。
うまくいっている現場ほど、地味な習慣を持っています。
導入前に確認すべき判断基準…安全と生産性のバランス
導入判断で確認すべき基準を5つ挙げます。
1つ目、リスクアセスメントを誰が実施し、文書として残すか。
2つ目、接触リスクのある範囲での速度設定と、それによるタクトタイムへの影響。
安全側に振れば速度は落ちます。
生産性が成立するかは事前の試算が必要です。
3つ目、作業者への教育。
産業用ロボットに関わる作業には特別教育が求められる場合があり、当社でも産業ロボット特別教育などの資格取得を社内で進めています。
4つ目、非常停止や再起動の手順が現場の実態に合っているか。
5つ目、将来のレイアウト変更時に安全条件を再評価する体制があるか。
ケースによりますが、この5つを提案段階で明確に説明できる業者なら、安全面は任せて大丈夫だと判断していいと思います。
逆に「協働ロボットだから何もしなくて大丈夫です」と言い切る提案は、比較対象から外すことをお勧めします。
よくある質問
Q1. 協働ロボットは本当に柵なしで設置できますか?
A1. リスクアセスメントを実施し、必要な対策を講じれば柵なし設置が可能です。
根拠は2013年の規制緩和とISO 10218・ISO/TS 15066です。
ただし条件次第では柵や区画が必要になります。
Q2. 接触したら本当に止まりますか?
A2. 関節のセンサーが接触を検知して停止する設計です。
ただしハンドやワークの形状次第では停止しても危害が残るため、システム全体での対策が前提です。
Q3. 事故が起きた事例はありますか?
A3. 協働ロボット固有の重大事故は国内ではほとんど報告されていませんが、産業機械全体では挟まれ・巻き込まれ災害が毎年発生しています。
だからこそ運用ルールが重要です。
Q4. 作業者に資格や教育は必要ですか?
A4. 産業用ロボットの教示や検査などの作業には特別教育が必要になる場合があります。
協働ロボットでも、関わる作業内容に応じた教育の実施を推奨します。
Q5. 安全を優先すると生産性は落ちませんか?
A5. 接触リスクのある範囲では速度を落とすため、タクトタイムに影響します。
人の動線設計やエリアセンサー併用で、安全と速度を両立させる設計が可能です。
Q6. 産業用ロボットとどちらを選ぶべきですか?
A6. 高速・高精度が必要なら柵で隔離した産業用ロボット、人と作業空間を共有するなら協働ロボットが基本です。
工程条件とレイアウトで判断します。
Q7. 費用はどれくらいかかりますか?
A7. 協働ロボット本体で300〜500万円程度、ハンド・治具・安全対策を含むシステム全体でその1.5〜3倍が目安です。
安全対策費は最初から見積りに含めて比較してください。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 協働ロボットは力と速度の制限で「触れたら止まる」設計。規格と法令に裏付けられた柵なし運用ができる
- 前提はリスクアセスメント。危険源はロボット本体よりハンド・ワーク・動線に潜む
- 安全と生産性はトレードオフ。両方を数字で説明できる業者を、比較の上で選ぶ
まずは対象工程の作業内容と人の動線を書き出し、危険源になりそうな点を洗い出してみてください。
その資料は、どの業者と話すときにも役立ちます。
安全の成立条件は、現場を見て初めて確定できるものです。
リスクの洗い出しという段階からで構いません。
検討先の1社として、石川工機へご相談ください。
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