産業ロボットの種類と選び方|用途別に最適な1台がわかる完全ガイド
どのロボットが自社の工程に合うのか分からない…産業ロボット6種類の特徴と用途別の選定基準
産業ロボットは、構造で分けると6種類に整理できます。
垂直多関節、水平多関節(スカラ)、直交、パラレルリンク、円筒座標、そして協働ロボットです。
選定で見るべき基準は、可搬重量・リーチ・繰り返し精度・設置スペース・サイクルタイムの5つ。
この5つを自社の工程と突き合わせれば、候補は1〜2種類まで絞り込めます。
逆に言えば、機種から入る選定は高い確率で遠回りになります。
それでも、カタログや展示会の動画を眺めるほど、迷いは深まるものです。
「展示会で見たあのロボットは、うちの工程でも使えるのか」
「メーカーに聞けば、結局その会社の製品を勧められるだけではないか」
夜の事務所で、そんな独り言が出ていないでしょうか。
この記事では、生産設備と自動化装置をつくり続けてきた石川工機が、6種類それぞれの特徴と、用途別の選定基準を現場の実例を交えて整理します。
【この記事のポイント】
- 産業ロボットは構造で6種類。工程との相性はほぼ決まっている
- 選定基準は可搬重量・リーチ・精度・スペース・タクトの5つだけ
- 機種から選ばず、工程を数字で測ってから逆引きするのが正しい順序
この記事の結論
- 一言で言うと、ロボット選びは機種選びではなく工程分析
- 溶接や重量物搬送は垂直多関節、高速組立はスカラ、決まった軌跡の作業は直交が基本線
- 人と並んで作業させるなら協働ロボットだが、速度制限とのトレードオフがある
- 最も重要なのは、サイクルタイムと可搬重量を数字で把握してから比較を始めること
産業ロボット6種類の特徴|まず全体像をつかむ
垂直多関節ロボット|溶接・搬送・組立まで対応する主力
人の腕に近い動きをする、最も普及しているタイプです。
日本ロボット工業会の統計でも、出荷台数の大きな割合を占める主力機種と報告されています。
6軸構成が主流で、ワークの姿勢を変えながらの溶接、工作機械へのワーク投入、パレタイジングまで幅広く対応します。
当社が約2年前に製作した直径600mmの鉄製冷却用ファンの溶接システムも、垂直多関節ロボットが中心でした。
円周に沿ってトーチの角度を変え続ける動きは、このタイプでないと成立しません。
一方で、動作範囲が球状に広がるため、安全柵まで含めた設置面積は意外と食います。
「本体は入るのに柵が入らない」という相談は、実はよくあるのです。
迷ったらまず候補に挙がる万能型ですが、万能ゆえに割高になる場面もあります。
水平多関節(スカラ)と直交ロボット|速さと低コストの担当
スカラロボットは水平方向の動きに特化したタイプで、電子部品や小物部品の組付け・移載が得意です。
上下方向の押し込み動作に強く、サイクルタイム1秒台の高速組立も珍しくありません。
直交ロボットは、XYZの直線軸を組み合わせた最もシンプルな構造。
動きは単純ですが、その分コストを抑えやすく、専用機への組み込みにも向きます。
塗布や検査のように「決まった軌跡を正確になぞる」工程では、多関節より直交のほうが合理的なことも多い。
実際、当社が400件以上手がけてきたエンジン・ミッション用シール材塗布装置でも、直線軸の構成が活きる場面は少なくありません。
派手さはないものの、コストと確実さで選ばれ続けているタイプです。
パラレルリンク・円筒座標・協働ロボット|高速仕分けと人との共存
パラレルリンクロボットは天吊りの3本腕で、軽量物の高速ピッキングが専門です。
食品や小物の仕分けで、1分間に100個以上を拾い続ける現場もあります。
円筒座標型は採用例こそ減りましたが、旋回と直線だけのシンプルな搬送では今も選択肢に残ります。
そして近年、中小の工場で存在感を増しているのが協働ロボットです。
リスクアセスメントなど条件を満たせば安全柵なしで人の隣に置けるのが最大の特徴で、当社もテックマンロボットを使ったパレタイジングシステムを3件構築してきました。
ただし、人への接触を前提に速度が抑えられるため、処理能力は産業ロボットに及びません。
「柵が要らないから」という理由だけで選ぶと、タクトが合わずに後悔しやすい。
ここが選定の大きな分かれ目になります。
用途別の選定基準|機種からではなく工程から逆引きする
選定基準は5つ|可搬重量・リーチ・精度・スペース・タクト
比較の物差しは5つに絞れます。
第一に可搬重量。
ワークだけでなく、つかむためのハンドの重さを足して考えます。
ワークが3kgでもハンドが5kgなら、必要な可搬重量は8kg以上です。
第二にリーチ。
取り位置と置き位置の最遠点に、余裕を持って届くかどうか。
第三に繰り返し精度。
精密組立なら±0.02mm級が要る一方、パレタイジングなら±0.5mmで十分なこともあります。
第四に設置スペース。
本体ではなく、柵・制御盤・架台まで含めた面積で見ます。
第五にサイクルタイム。
1個あたり何秒で処理できないと生産が回らないのか。
正直なところ、この5つが数字でそろっていれば、機種選定の8割は終わったようなものです。
実際にあった選定の現場|協働ロボット希望が覆った話
愛知県内の樹脂部品メーカーから、こんな相談を受けたことがあります。
『展示会で協働ロボットを見たんです。柵が要らないなら、うちの狭い現場でもいけますよね』
最初から機種が決まっている相談ほど、当社は慎重になります。
現場確認で工程を測ると、求められるサイクルタイムは1個あたり約6秒。
協働ロボットの安全速度では、どう構成しても10秒を切れない計算でした。
数字をそのままお見せして、小型の垂直多関節ロボットと省スペース柵の組み合わせをご提案。
ご担当者は最初こそ残念そうでしたが、「導入してから気づいていたらと思うとぞっとする」と納得されました。
逆のケースもあります。
別の金属加工業の現場では、タクトに余裕があり、人が頻繁に出入りするレイアウトだったため、協働ロボットが最適解でした。
機種に良し悪しはなく、あるのは工程との相性だけです。
ちなみに先の樹脂部品メーカーでは、立ち上げから数カ月後、「機種名で悩んでいた時間は何だったのか」と笑っておられました。
昼休みにカタログを広げる習慣が消え、代わりに次の工程の話が出るようになったそうです。
このあたりの切り分けは、図面や工程の動画だけでもある程度判断できます。
機種選定で迷ったら、比較検討の材料集めとして石川工機の相談窓口を使ってください。
迷ったときの判断基準3つ|カタログより先に測るもの
それでも決めきれないときは、次の3つを順に確認してください。
ひとつ目は、1個あたりの要求タクトの実測値。
ストップウォッチで現状作業を10回測るだけでも、判断材料として十分機能します。
ふたつ目は、ワークの重量と形状のばらつき。
品種が多いほどハンド設計が難しくなり、機種より先にハンドで構成が決まることさえあります。
みっつ目は、人がその工程エリアに入る頻度。
1時間に何度も人が横切るなら協働ロボットや安全機器の検討が要りますし、ほぼ無人なら産業ロボットで速度を稼ぐべきです。
経済産業省のものづくり白書でも、人手不足を背景に中小製造業のロボット活用が広がっていると示されています。
ただ、普及期だからこそ「とりあえず有名な機種」で選ぶ失敗も増えている印象です。
ケースによりますが、複数メーカーを扱えるSIerに工程ごと相談したほうが、結果的に早く安く着地することが多いと感じます。
よくある質問
Q1. 産業ロボットの価格はどれくらいですか?
A1. 本体は数百万円が中心で、協働ロボットは300〜500万円程度が目安です。
ハンドや柵、制御を含むシステム全体では本体の1.5〜3倍を見込みます。
本体価格だけで予算を組まないことが重要です。
Q2. 6種類のうち中小工場で最初に検討すべきはどれですか?
A2. 溶接・搬送なら垂直多関節、人と並べたい工程なら協働ロボットの2択から入るのが現実的です。
出荷統計でも垂直多関節が主流で、実績や情報量の面でも選びやすい機種です。
Q3. 協働ロボットと産業ロボットはどちらが得ですか?
A3. タクト重視なら産業ロボット、レイアウト自由度重視なら協働ロボットです。
柵が不要になる分、協働ロボットは省スペースですが、速度は産業ロボットに劣ります。
損得は工程条件で逆転します。
Q4. 繰り返し精度はどこまで必要ですか?
A4. 精密組立で±0.02mm級、一般組付けで±0.1mm程度、パレタイジングなら±0.5mmでも十分です。
必要以上の精度は価格に跳ね返るため、工程ごとに要求値を分けて考えます。
Q5. 多品種少量の工場でもロボットは使えますか?
A5. 使えますが、品種切り替えの段取り設計が成否を分けます。
ハンドの共用化やプログラム切り替えで対応した例は多くあります。
品種数と切り替え頻度を先に整理してから相談すると確実です。
Q6. ロボット選定は誰に相談すべきですか?
A6. 特定メーカーに縛られないロボットSIerへの相談が有力です。
メーカー1社に聞くと選択肢がその製品に限られがちです。
複数機種を比較できる立場かどうかを確認してください。
Q7. 選定から導入までの期間はどれくらいですか?
A7. 現場確認から見積りまで数週間、設計・製作・立ち上げまで含めると数カ月〜1年程度が目安です。
繁忙期を避けた導入計画のため、早めの相談が有利です。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 産業ロボットは6種類。工程との相性で候補は1〜2種類に絞れる
- 可搬重量・リーチ・精度・スペース・タクトの5つを数字で把握するのが先
- 機種起点ではなく工程起点。迷ったら複数機種を扱うSIerに逆引きで相談
機種名を検索し続けるより、自社の工程を10回測るほうが選定は前に進みます。
そのうえで答え合わせが欲しくなったら、現場を見て判断できる相手に聞くのが近道です。
工程の動画や手描きのレイアウト図だけでも構いません。
どの種類が合うのかという入り口の整理から、石川工機へご相談ください。
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